地質調査では、さまざまな手法を使って地表面下の地盤構造を推定し、構造物の基礎となる地層の評価や、斜面災害を引き起こすおそれがある地層の判定などを行っています。
地下の地盤構造はとても複雑のため、限られた情報に基づいて推定せざるを得ず解釈に頭を悩ますこともありますが、種々のデータを集積して検討を重ねることで、少しずつ明らかにできる(自分自身が咀嚼できるようになる)ところに調査の醍醐味があります。

地質調査、斜面防災調査、敷地地盤調査

  • 空中写真判読
  • 地表踏査
  • 機械ボーリング
  • 観測
  • 地質総合解析
  • 物理探査
    (電気探査/地温探査/ジオトモグラフィー(弾性波・比抵抗)
  • 原位置試験
    (サウンディング/平板載荷試験/孔内水平載荷試験
  • 室内試験
    (土質試験/岩石試験/分析試験(化学分析・水質分析・土壌分析)
ボーリング

地形判読

国土地理院が発行する2万5千分の1地形図、測量をもとに作成された平面図、空中写真等を利用して調査箇所周辺の地形を判読し、その場所の成り立ちや地質を推定します。

解りやすい代表な地形としては、谷の出口を頂点に下流へ向かって扇のような形で広がる扇状地地形、河川に平行するように高さの異なる複数の平坦面が点在する段丘地形、急斜面の下方に緩傾斜地が形成されることの多い崩壊地形等があり、地形的な特徴からさまざまな情報を読み取ることができます。

近年ではドローンを用いた航空レーザー測量(以前はヘリコプターやセスナ機が必要でした)による点群データ(位置と高さの情報を持つ点の集まり)を取得し、精細な現地形を比較的手軽に把握することができるようになってきました。

点群データからは地表面の起伏や傾斜の度合い等をマップ上に表現できるため、地形判読を多角的に行うことが可能になっています。
こちらの画像は同じ扇状地地形をみたときの①空中写真(GoogleMap)、②陰影図(光の当て方で起伏を判読)、③傾斜度(色が濃いほど傾斜がきつい)、④CS立体図(凸地を赤、凹地を青、斜度を濃淡で表した図)です。

違いを見比べてみてください。

地表踏査

現地に直接赴いて地層の露頭、地表の状況(土地利用、亀裂、段差、陥没、樹木の変形発育等)、微地形(凹地、凸地、平坦地、池沼、湧水、沢地形等)、既設構造物の状態(クラックやひび割れの有無等)を調査します。

各種の情報は地形図上に記載し、地層の分布や斜面変動の範囲の推定、調査ボーリングの位置の検討等に利用します。地すべりを対象とした地表踏査では、時間をおいて同じ場所を追跡調査することによって亀裂の進行性(断続的な斜面変動)が明らかになることもあります。

機械ボーリング

単管パイプで組んだ足場の上にセットしたボーリングマシンを使って、直径7~9cmの円筒管を回転させて地盤を掘進し、地表面下の土(または岩盤)の地質標本(コア)を直接採取します。

ボーリング調査孔は原位置試験の並行、乱れの少ない試料採取のほか、終了後に保孔管を埋設して観測孔として利用することができます。地質標本は新たな露頭に匹敵する価値があり、通常では観察できない重要な情報となります。

あくまでも点の情報となりますので、詳細な地層の分布を把握するためにはできるだけ密な配置でボーリングを行うことが適切です。

観測

観測機器は目的に応じてさまざまな種類が開発されています。
こうした観測機器を地上部またはボーリング孔内に設置し、亀裂の進行(地表伸縮計)、地下水位の変化(地下水位計)、地盤内における変形の度合い(パイプ歪計、孔内傾斜計))等を測定します。観測の結果は気象との関連を含めて整理し、事象の発生に至った素因、誘因を推定したり、対策工の施工前後における数値の変遷をもとに効果判定を行うこともあります。

こちらは地すべり地内に設置したパイプ歪計と地下水位の観測変動図の一例です。
降雨後の地下水位上昇とほぼ同時に地すべりが滑動し、地中のパイプが変形している様子を読み取ることができます。

物理探査

電気の通しにくさから地層や地下水の分布を推定する比抵抗二次元探査(電気探査)、震動の伝わり方から地層の分布や硬さを推定する弾性波探査および表面波探査、電磁波の反射状況から地下の空洞、埋設物を調査する地中レーダー探査等があります。
物理的な現象を利用する調査方法のため、比較的短い期間で広範囲を探査することが可能です。主にはコンピュータを用いたデータ解析を行って物性(物理特性)の違いを求め、トライアル計算により整合性の高い結果を導き出しますが、別の探査やボーリング調査を組み合わせて精度を高める方法が取られることが多いです。

あくまでも間接的に推定する形となるため、解析結果を解釈するうえでは技術員の経験と技量も重要な要素の1つです。

原位置試験

一般的なボーリング調査では、標準貫入試験を並行して土の締まりや硬さを表す指標の1つとなるN値を測定するケースが大半を占めますが、他にも調査の目的に応じて地盤の変形に対する強さを調査する孔内水平載荷試験、水の通しやすさを調査する現場透水試験、地盤内における地下水の賦存状況を把握するための簡易揚水試験等が行われます。

室内試験

土は軟らかいものから硬いもの(または緩んだものから締まったもの)までさまざまな状態があり、土砂災害を引き起こす原因になったり、構造物を設置する際に問題を生じたりすることがあります。

室内試験は土の状態を把握して評価することを目的として行われます。大きくは物理試験と力学試験に分けられ、物理試験(粒度試験、含水比試験、湿潤密度試験等)では土としての基本的な性質、力学試験(一軸圧縮試験、三軸圧縮試験、圧密試験等)では土としての強さを調べます。